嵐山昇龍苑は食や工芸などの文化を知る入口

株式会社福寿園取締役社長 福井 正興

嵐山昇龍苑は食や工芸などの文化を知る入口

 寛政2(1790)年の創業以来、お茶一筋に歩み続けてきた福寿園。老舗茶舗だけに “伝統的な宇治茶” のイメージがありますが、嵐山昇龍苑内の嵐山茶屋では、抹茶ソースのパフェの上に綿菓子がのった「コットンパフェ」や、急須につかった可愛いお猿の「モンキークッキー」など、カジュアルなテイクアウトメニューを楽しむことができます。
他の福寿園の店舗とは少し雰囲気の異なるこのお店が誕生したきっかけは?
そしてそこに込められた想いとは。9代目社長の福井 正興さんにお話を伺いました。

嵐山の真ん中で気軽に京都の文化に触れられる

 当社は京都で創業して230年余り。京都に深く根差し、お越しになられる方を宇治茶でおもてなししたいという強い思いから、京都駅を中心に店舗展開していたのですが、東山や嵐山といった目立った観光地には店舗を構えていませんでした。
何かきっかけがあればと思っていた時に、嵐山昇龍苑がオープンするからとお声がけをいただき、嵐山茶屋は誕生しました。
 嵐山昇龍苑のように、“老舗”や“名店”と呼ばれるようなさまざまなお店が一堂に会して、しかもそれぞれに暖簾を構えている場所はそれほど多くありません。
近隣には天龍寺や野宮神社をはじめ、歴史を感じる素晴らしい名所が点在していますが、食や工芸などもまた、同じく長い時をかけて培われてきた歴史的な文化です。
宇治茶の体験やテイクアウトメニューを通して、それらに気軽に触れることができるので、生産者の思いやこだわり、背景なども含めて文化面も一緒に楽しんでいただきたいですね。

テイクアウトメニューをお茶に興味をもつきっかけに

 お茶の場合、製品になるまでに想像以上の時間と労力がかかります。
京都の山間の急斜面で農家さんが茶の木を育て、茶葉が摘めるようになるまで4〜5年。丹精込めた毎日の茶園の管理はもちろんのこと、摘んだ後も茶葉が痛まないよう徹底した品質管理が必要です。
それだけの手間暇に報いるためにも、私たちの製茶技術で付加価値をつけて、その魅力を広く知ってもらい適正な価格で販売する。それが農家さんやお客様の幸せにも、宇治茶の文化伝統、技術も守ることにも繋がると考えています。
 生活様式が変わり急須でお茶を飲む機会が減っていますし、また、お茶に関心があっても敷居が高いと思っておられる方も多くおられます。
嵐山茶屋のテイクアウトメニューや3年前に立ち上げた新ブランド「FUKUCHA」のラインナップが、お茶に興味を持ってもらうきっかけになればと願っています。

手軽に楽しく淹れられる新感覚のドリップティー

 「FUKUCHA」は、「100年先の世代に宇治茶をつなぐ」をコンセプトにした、宇治茶の新たな可能性をご提案する新ブランドです。昨年から販売を開始した、ドリップタイプのブレンドティーもその一つ。
当社の茶師が蒸らす時間や抽出効率を考え、急須で淹れたお茶と同じように「色」「香り」「旨味」が楽しめるようにブレンドしました。
 お茶を淹れる際に大切なのは、最後の一滴……いわゆる「ゴールデンドロップ」まで絞りきることです。
旨味がぎゅっと詰まったこの一滴を、ドリップティーなら誰でも簡単に絞りきることができます。
手軽に楽しく淹れられるだけでなく、実は理にもかなっているこの新感覚のお茶。
嵐山茶屋では販売はもちろん、ご自身で淹れたてを楽しんでいただくこともできます。

「ドリップスタンド」税込1980円、
「マイドリップティー(緑茶ブレンド・和紅茶・玄米茶/各35g袋入、ほうじ茶/30g入)」税込1080円

嵐山旅の思い出に嵐山茶屋限定のお茶を

 スタンダードなタイプのお土産なら、嵐山茶屋限定の「渡月シリーズ」をどうぞ。
「煎茶 渡月」は、何といってもその豊かな香りが特長です。口に含めば、甘味を含んだ爽やかな香気がふわりと広がり、後口に優しい余韻を残します。もう一つの「かりがね 渡月」は、厳選した良質のお茶の茎だけを原料にし、渋みが少なくさっぱりとした味わい。口当たりが軽いので、普段、緑茶を飲み慣れない方にもおすすめです。どちらも茶葉(リーフ)タイプと、手軽なティーバッグタイプをご用意しています。渡月橋と移り変わる四季をイメージしたパッケージデザインなので、嵐山の旅の思い出にぴったりじゃないでしょうか。
 嵐山はゆっくり過ごせば過ごすほど、良さがみえてくる場所だと思います。ぜひ時間に余裕を持ってお越しいただき、さまざまな面から歴史と文化を楽しんでみてください。

「煎茶 渡月」「かりがね 渡月」各50g袋入・税込810円、
ティーバッグ各2g×10袋入・税込594円

例年、秋には大堰川で鵜飼が行われますが、夜の屋形船は雰囲気があって好きですね。
一度、夜の屋形船に芸舞妓さんを招き、一調一管(小鼓・大鼓・太鼓のいずれかと笛による演奏)を堪能するという風流な会に参加させていただいたのですが、静寂の山間ですので、その幽玄な音色が辺りに反響するんです。あれは忘れられない感動の体験でした。